ワレンベルグのパート生活(脳梗塞の狂想曲)

ワレンベルグ症候群(脳梗塞の一種)の後遺症に抗いながら再就職、パート勤務

ホームオーディオの殺し文句

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今から20年以上前、パイオニアとかがオーディオの雄であったころ、
嫁さんと大手電機店にステレオ(システムコンポ、ミニコンポ)を買いに行った。
まぁ嫁さんとクルマの中での会話では、
ボーズのウエーブシステムでいいのではないかなということで、
値段だけがどこまでいくかという話だった。

しかし結果的に、ある店員さんが言った言葉、

ボーズのようなドンシャリもいいですが、この1ビット、
自然な素直な音は疲れなくてイイですよ
という殺し文句に殺されて、全く別のS社の1ビットオーディオを購入した。

(つづく)

 

売り場に着き、ざっと一通りみて、
ボーズ以外のミニコンポはどれも似たりよったりだった。
少し高いけど仕方ないかなという話をしていたら、ある店員に声をかけられる。

ボーズにするのであれば、聴いて欲しいオーディオがあるという話になった。

売り場の隅にあった全然眼中になかったオーディオ、
へんてこりんな形でピカピカ光る箱が2つ、
スピーカーは、良く言えば「近未来」、悪く言えば「無駄に斜めの造形」、
しかし音を聴いてみれば、あの売り場ではもっとも素直で澄んだ音のように
聞こえたのであった。

店員の言ったことは事実であった。

それが家電のS社が、当時、満を持してオーディオ界に売り込みをかけた
1bitのオーディオシステムであった。
殺し文句の店員は、S社からの派遣の技術者であった。
自分よりは10歳ほど上に見えたその人は、自社製品と技術に自信と誇りを持っていた。

 

20年余の時を超えて、南国鹿児島の高温多湿の古い我が家のエアコンのない部屋で
そのオーディオは何とか生きている。
古い電子機器にとって南国の高温多湿は厳しいようで調子が少し悪い。

時々、起動時に電源がカチカチと小言を言うように立ち上がる。
しかしいったん立ち上がれば、さすが1ビット、
素直な自然な音づくりで作られたものは今でもいいのだ。

戦友でもある。15年ほど前にヨーロッパに技術者(の端くれ)として出向したときに、
一緒に海を渡った。
ヨーロッパの夏は日本と違いカラッとした空気、
異文化や異なる言葉に苦労する自分に、優しいいい音を聴かせてくれた。
(なかなか、会社からは認められるような仕事、成果は残せなかった)

ただし、仕事を離れれば、日本では到底味わことのできない、ゆったりとした時を過ごした5年半だった。文化、歴史を大事にする、急がない大人の国々、ヨーロッパ。

帰国後、一変せわしい時間を過ごし、このオーディオの電源が入る機会もめっきり減って、部屋の隅に。
オーディオシステムを鳴らして聴くという文化自体が、日本ではもう時代遅れになっていた。

そしてs社も、、このオーディオ部門が消え、信じられなかったが
メーカ本体も外資で買われる時代になった
(あの店員さん(技術者)はいまごろどうしているだろうか)。

でも今でも、このオーディオは生きている。
聞き飽きない、自然な音が部屋に響く
(ように聞こえるのは、むかし、殺し文句に殺された自分の耳の幻聴かもしれないが。自分も還暦に近づき、今年(2023年)脳梗塞を突然煩い、しばらく入院。一時は命も危なかった)。

時代遅れのこの戦友は、今年の暑い夏も辛うじて動いている。
ヨーロッパのカラッとした夏が懐かしいと、
小言を言いながら、危うい感じで辛うじて立ち上がった。
まだ幕引きには早いと。

(店員さんとのエピソードよりも 買った製品との関わりのエピソードが長くてすいません)

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